民法|時効完成を主張する(時効の援用)

query_builder 2021/08/27
blog:民法
いらすとや 挙手

援用(えんよう):自説を有利にするために、その証拠となる事実や文献を引用すること。(引用:学研 現代新国語辞典 改訂第四版:編者 金田一春彦、金田一秀穂)


時効の効果は、時間の経過により当然に発生するわけではありません。

「時効完成の利益を受ける」旨の意思表示が必要です。


目次 
1.自分で主張する必要があります(時効の援用)
2.本人以外にも援用できる人がいます(援用権者)
3.援用の方法(裁判・時効援用通知書)
4.援用が制限される場合
5.地方自治法236条2項(時効援用・放棄の排除)



1.自分で主張する必要があります。


債権は、5年間または10年間の権利不行使期間があると「時効によって消滅」します(民法166条1項)。


素直に読むと、時間の経過によって自動的に効果が発生するようにみえます。

しかし、効果を発生させるには自ら主張する必要があります。

これが「時効の援用」(民法145条)です。


第145条(時効の援用)
時効は、当事者(略)援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。


なぜ、このようなひと手間が必要かというと、時効という制度が少々不道徳な一面を持っているからです。

参照⇒blog:時効制度の存在理由


「時効で消滅したのはわかっているけど、借りたものは返す」といった人の良心に配慮して、時効の利益を受けるか否かをその人の意思に任せています


援用とは逆に、時効の利益を受けない意思表示は「時効利益の放棄」と言います。

blog:時効利益の放棄



2.本人以外にも援用できる人がいます。


「時効の利益を受ける」旨の意思表示は、時効の完成によって利益を得る当事者(債務者など)は当然主張できます。


さらに、「正当な利益を有する者」も援用することができます。


第145条(時効の援用)
時効は、当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。


条文の文言上、消滅時効の場合の具体例として保証人、物上保証人、第三取得者が挙げられています。


「正当な利益を有する者」としては、賃借権者地上権者詐害行為(424条)の受益者などに時効の援用が認められています。

(常に援用が認められるわけではなく、問題となっている権利の種類、状況により認められないこともあります。)


他人が介入できるので、先述の“時効の利益を受けるか否かその人の意思に任せてる”と整合しませんが、他人を巻き込んでまで自分の良心を貫くことは認められません。


ただし、時効援用の効果は、原則として援用した人にだけ生じます。

その意味で整合性は保たれています。これを「時効援用の相対効」と言います。



3.援用の方法(訴訟提起、時効援用通知書)


民法145条には「援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。」と規定されています。時効の援用は、訴訟の場面において裁判所で主張することが主に想定されているからです。


[再掲]第145条(時効の援用)
時効は、当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。


とはいえ、時効を援用するためには必ずしも訴訟を提起する必要はありません。

時効の援用は、裁判外でも可能す。


具体的には、「時効援用通知書」を内容証明郵便で債権者に送付します。

一般の郵便や口頭での主張も可能ですが、証拠を残すために内容証明郵便を用います。

時効援用通知書については⇒blog:内容証明郵便|時効援用通知書



4.援用が制限される場合


消滅時効が完成した後に債務を「承認」(152条)すると、消滅時効を援用することはできません。時効完成の事実を知らなくてもです。


その根拠となるのは民法1条2項の「信義誠実の原則」です。債務を承認すると、相手からすれば「時効消滅したのに払ってくれるんだ」という期待が生じます。その信頼を裏切ってはいけなという考えに基づきます。


また、同条2項の「権利濫用」として援用が許されない場合もあります。


なお、「承認」により今後一切の時効援用が否定されるわけではありません。

再び時効完成に必要な期間が経過すれば、時効を援用することができます。

債務の承認の効果については⇒blog:時効完成を阻止する



5.地方自治体法236条(時効援用・時効放棄の排除)


地方自治法には、時効の援用と放棄を排除する規定があります。


地方自治法236条2項
金銭の給付を目的とする普通地方公共団体の権利の時効による消滅については、法律に特別の定めがある場合を除くほか、時効の援用を要せず、また、その利益を放棄することができないものとする。普通地方公共団体に対する権利で、金銭の給付を目的とするものについても、また同様とする。


ものすごく勝手な決まりにも見えますが、もちろん理由があります。

行政事務の早期確定と公平な処理のためです。


“時効を援用するのか?” または“放棄するのか?”

結論を待っている間は行政事務を進めることができません。

そうのような不安定な状況を回避するための規定です。


ただし、地方公共団体の住民に対する損害賠償責任など、私法上の金銭債権に本条項は適用されません。


また、住民の権利を著しく阻害するような場合には信義則違反・権利濫用として消滅時効の主張が許されません。


基本的には、住民の不利には働かないようになっています。



民法|時効完成を主張する(時効の援用)|金田一行政書士事務所

NEW

  • 民法|贈与契約の基本と親族間での贈与

    query_builder 2021/12/05
  • 民法・刑法|詐欺と詐欺罪と和菓子

    query_builder 2021/11/29
  • 経営事項審査|CPDと建設キャリアアップシステムの加点

    query_builder 2021/11/22
  • 建設業許可|そろそろ登録したほうが...『建設キャリアアップシステム』【CCUS】

    query_builder 2021/11/15
  • 内容証明郵便|未成年者の詐術を指摘する文例

    query_builder 2021/11/09

CATEGORY

ARCHIVE