民法|越境した木の切除

query_builder 2024/02/09
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民法 木の枝1

2023年の4月1日から、隣地から越境した竹木を土地所有者自ら切除できるようになりました。「これで長年の悩みから解放される!」とお喜びの方も多いと思いますが、無条件で切除できるわけではありません。条件が意外と厳しいので、その点にはご注意ください。



切除が認められるケース(民法233条3項)


① 催告後の切除

竹木の所有者に越境した枝を切除するよう催告したが、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき  


②所有者不明・所在不明

竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき  


③急迫の事情

急迫の事情があるとき  



①催告後の切除

越境した竹木の所有者に「枝を切ってください」と催告し、相当の期間内に切除してくれない場合、自ら切除することが可能です。


「催告」内容証明郵便で伝えることをお勧めします。「相当の期間内」は、約2週間と言われています。ただし、切除する範囲や量によっては数カ月が「相当」とされる場合もあり得ます。    


 今後のご近所関係を考えると、なかなか実行しづらい手法です。法律的には正しくても、その後のご近所関係まで法律がフォローしてくれるわけではないからです。話し合いができるのであれば話し合いでの解決が最善策です。


「それができたら苦労はしない」とお悩みの方も多いと思います。どうしても切除する必要がある場合、お住まいの自治体や法律家にご相談のうえ、慎重に対処してください。  



②所有者不明・所在不明

越境した竹木の所有者が不明、又はどこに住んでいるのか分からない場合です。    


 単に、「お隣さんには会った事が無い」とか「交流が無いのでどこの誰だか知らない」では不十分です。それなりに手間をかけて調査する必要があります。法務局に行き、「登記事項証明書」を取得すると、そこには土地所有者の氏名と住所が記載されています。「所有者不明」は稀です。記載された住所に居住しているとは限りませんので「所在不明」はあり得ます。所有者として記載されている方が亡くなっている場合、相続人を調べる必要がありそうです。  



③急迫の事情

「急迫の事情」とは、台風で枝が折れたら大変なことになる、電線に引っ掛かりそうで危険、といった事情です。    


「急迫」とは差し迫った状態のことなので、「なんか危なそう」では足りません。程度の問題でもあるので一概には言えません。  


「本当に危なかったので承諾なしに急遽切りました。ごめんなさい。」 そんな場面で、「でも適法ですよ。」と主張できることを憶えておいてください。


 本当に危険なら、迷っている時間はありません。  


 ちょっと話は違いますが、民法改正後、自治体では初の例として、某自治体が実施した「市道にはみ出した樹木の剪定」が注目されました。


 ニュース映像を観る限り、片側一車線の道路に木がせり出しており、木の枝を避けるにはセンターラインを越える必要があります。交通事故の原因になるので「急迫の事情」のケースかな?と思ったのですが、実際には上述の「①催告後の切除」として実行したようです。「急迫の事情」でやってくれたら良い参考になったのですが、数年間同じ状況が継続していたようなので急迫性が弱いとの判断でしょうか。  時間を掛けて協議を重ね、穏便に済むよう丁寧に手続きを進めたようです。これはこれでとても参考になります。



費用について  

 越境された側が自ら枝を切除した場合、その費用は不当利得(民法703条)または不法行為(民法709条)を根拠に請求することができます。   実際に請求するには、703条又は709条の要件を充たす必要がありますが、竹木の所有者が「切除義務」を免れたとすれば不当利得、越境により土地の所有権を侵害したならば不法行為が成立し得ます。  



竹木が共有されている場合の切除  

 上記①~③の前段階、「承諾して頂ければ、こちらで切除します」と話し合いをしている状況の場合、竹木の共有者の一人としか協議をしておらず、他の共有者が協議中であることを知らない、又は切除に反対している場合、共有者のうち一人の承諾だけで切除は可能でしょうか?  


 かつては法律上のややこしい問題がありましたが、現行の民法を適用すると、共有者の一人から承諾を得れば、切除を代行することは可能です。改正前の民法では、「みんなの物なので、全員の同意がなければ切除はできない」と解釈することが可能でした。この点が改正され、他の共有者の同意がなくても、共有者の一人が単独で枝を切除できるようになりました(民法233条2項)。  


 単独で切除できるので、切除の同意も単独で可能です。他の共有者が遠方に住んでいたり、疎遠になっていたりする場合、現地にお住まいの方とだけ協議すれば済みます。ずいぶん手間が省けますが、可能であれば他の共有者の意見も聴いておいた方がよいでしょう。  


 なお、「①催告後の切除」の場合、催告は共有者全員に対してする必要があります。誰からも承諾を得ていないので、原則に戻り、切除することを全員に知らせる必要があるからです。共有者の中に所在不明の方が居る場合、「②所有者不明・所在不明」のケースと同様、その方について催告の必要はありません。



以前は・・・


 旧民法では、「根は勝手に切っていいけど、枝はダメ」とされていました。根と異なり、枝を切ると外観が変わってしまいます。大切に育てた樹木を雑に剪定してしまうのは可哀想です。植え替えという選択肢もあるので、本人の意向は無視できません。そのような点を考慮して、枝を勝手に切ることはできませんでした。


 ルールが変ったとはいえ、このような価値判断はまだ残されているように思います。その点に御配慮のうえ、慎重に丁寧に進めてください。     


木の枝 切除 民法


参考資料:法務省民事局「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント」(令和6年1月版)




民法|越境した木の切除

茨城県稲敷郡阿見町の金田一行政書士事務所

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