民法|時効完成を主張しない(時効利益の放棄)
時の経過によって時効が完成すると、相手の有していた権利が消滅したり、自分が持っていなかった権利を取得することができます。
しかし、それを潔しとしない方のために、そのような「時効の利益」を「放棄」することが認められています。
目次 1.時効利益を放棄するとどうなるか 2.放棄ができない場合 3.放棄の条件 4.放棄の効果は自分だけ(相対効) 5.時効の放棄に関する特約 6.まとめ |
1.時効の利益を放棄するとどうなるか
時効の利益を放棄すると、時効を援用することができなくなります。
消滅したと思っていた債権は消滅しません。債務はそのまま残ります。
※理論的には、一旦消滅したものが復活したとも表現できますが、アカデミックな話になるので通説(不確定効果説)に従います。
ただし、時効の放棄後、さらに時効期間が満了した場合、新たに時効を主張することができます。
2.放棄ができない場合
時効の利益は時効の完成前に放棄することができません。
民法第146(時効利益の放棄) 時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。 |
契約の時点では弱い立場にあることが多く、そこを突いて不利な契約を強要されるのを防ぐ。それが本条の趣旨です。
3.放棄の条件
時効利益の放棄は、時効の完成を知っている状況でなされることが条件です。
少々話は違いますが、時効の完成を知らない状況でも「債務を承認」してしまうと、「やっぱり時効を援用します」とは主張できません。これは放棄とみなさたわけではありませんが、放棄と同じような結果になります。
時効主張の制限については⇒blog:時効の完成を主張するの「4.援用が制限される場合」をご参照ください。
4.放棄の効果は自分だけ(相対効)
時効利益の放棄により影響を受けるのは、原則として放棄したその人自身だけです。これを相対効と呼びます。
例えば、債務者が時効を放棄した場合、当該債務を保証した人は、これに拘束されるいわれはありません。
したがって、保証人は独自に時効消滅を主張することができます。
保証付きだった債務が保証の無い債務になり、保証人は保証債務から解放されます。
5.時効の放棄に関する特約
(再掲) 民法第146(時効利益の放棄) 時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。 |
先述のように、時効完成前に時効利益を放棄することはできません。
民法が契約自由の原則、私的自治を認めているとはいえ、圧倒的に不利な立場を強要する特約は認められていません。
契約自由の原則については⇒blog:契約自由の原則
[145条に違反する特約の具体例]
・消滅時効にかからず、永久に権利行使ができる旨の特約
・時効期間を延長する特約
・時効を援用すると同時に、同一内容の債務を当然に負担する旨の特約
時効の援用を不可能にしたり、困難にしたりする特約は無効です。
反対に、時効完成を容易にする特約は本条の趣旨に反しませんので有効です。
6.まとめ
時効を放棄して消滅時効を主張しないという高潔な意思は尊重されるべきですが、それを貫けないこともあります。
時効の放棄をするのであれば、放棄の効果をよく理解しておいてください。
また、放棄するつもりは無いのに放棄を強要される、放棄したと勘違いされる。そのような不利益を回避することも重要です。
民法|時効完成を主張しない(時効利益の放棄)
茨城県稲敷郡阿見町の金田一行政書士事務所
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