民法|お金の貸し借り【金銭消費貸借契約】

query_builder 2021/08/29
blog:民法
いらすとや 借用書

2021.10.31加筆


お金の貸し借りは身近な法律行為ですが、友人間での場合など、ルーズになりがちな契約類型でもあります。


借用書がないとだめなのか、そもそも金銭消費貸借とは何か、基本事項について解説します。


目次
1.借用書は必要か
2.借用書と金銭消費貸借契約書の違い
3.借用書の代わりになるもの
4.できれば作成したほうが良いです
5.お金の貸し借りで決めておきたい事項
6.そもそも金銭消費貸借契約とは

7.諾成的消費貸借契約(2020年4月施行改正民法)



1.借用書は必要か?


お金の貸し借りをする際に作成する書類といえば「借用書」が思い浮かぶと思います。

しかし、お金の貸し借りに借用書または金銭消費貸借契約書は必須ではありません。

これらを作成しなくても契約は成立します。


借用書が重視されるのは、裁判等での重要な証拠になるからです。


相手が借金を否定していないなら、作成していなくても特に問題にはなりません。

(否定する人がいるので軽視はできませんが)



2.借用書と金銭消費貸借書の違い


借用書は、借主が単独で署名・押印して貸主に交付する文書です。一方、金銭消費貸借契約書は双方が署名・押印し、それぞれが保管します。記載する内容は変わりません。法律的効果も同じです。
※借用書に署名・押印するのは借主だけですが、偽造防止のため2通作成し、借主も保管します。



3.借用書の代わりになるもの


証拠となる書面を作成していないと、相手がそれに乗じ、お金を借りたことを否定してくるかもしれません。


そのような場合、「当時お金に困っていた」「急に金回りがよくなった」「お金がないはずなのに車を買った」といった間接的な証拠から、お金の貸し借りがあったことを証明することもできますこれは裁判の話なので、弁護士さんに相談してください)


とにかく、証拠は沢山あった方が良いです。


例えば、メールやLINEでお願いされたならそのメールやLINEを、口頭でお願いされたならその会話を録音しておくと役に立ちます。


会話の録音は気が引けますが、簡単にできるのは、金融機関で振込を利用することです。

現金の手渡しと異なり、振込明細や通帳というかたちで証拠を残せます。

こちらは貸す側なので、お金の渡し方を相手に指定される筋合いはありません。



4.できれば作成した方が良いです。


借用書がなくてもなんとかなるかもしれませんが、借用書が紛争防止のための重要な証拠になることは確かです。


友人間のお金の貸し借りでいちいち「借用書を書いてね」なんて言ってたら、相手を信用してないようで躊躇すると思います。私もそうです。


きちんと書面を作成することがあたり前になってくれればいいんですけどね。



5.お金の貸し借りで決めておきたい事項


[記載すべき事項]

金額、返済期日、返済方法、利息の有無、遅延損害金の利率、期限の利益喪失


[状況により記載する事項]

連帯保証、抵当権の設定、相殺など


法定の利息については⇒blog:法定利率に変動制を導入



6.そもそも金銭消費貸借とは


金銭消費貸借契約とは、金銭を消費貸借の目的とする契約です。


民法第587条(消費貸借)
消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。


賃貸借・使用貸借も同じ「貸借」ですが、これらが借りた物をそのまま返すのに対し、消費貸借においては同種同等同量の物を返還する点が異なります。


金銭消費貸借の成立要件は2つだけです。


①借りた金銭と同額を返還することを約して

②貸主から金銭を受け取る


返済期日や利息の有無等は決めておいたほうが良いのはもちろんですが、契約の成立要件ではありません。



8.諾成的消費貸借契約(2020年4月施行改正民法)


旧民法では、上述の「②貸主から金銭を受け取る」ことが契約成立の要件となっていました。契約の成立に物の引渡しが必要なので、これを要物契約といいます。


この場合、貸主は既にお金を渡しているので、借主の側に「お金を渡してください」と請求する権利はありませんでした。


しかし、改正された民法では、この「要物性」が緩和され、物の引渡しがなくても、その引渡しを約束するだけで(金銭)消費貸借が成立することを認めています。これを「諾成的消費貸借契約」と言います。この場合、借主は貸主に対して「約束通りお金を貸してください」と請求することができます。


民法587条の2(書面でする消費貸借等)
1項 前条の規定にかかわらず、書面でする消費貸借は、当事者の一方が金銭その他の物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物と種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。
2項 借主の解除権(略)
3項 当事者の一方の破産手続きの開始(略)
4項 電磁的記録による作成(略)


本条の「書面」とは、①貸主の貸す意思と、②借主の借りる意思が表示された合意書面を指します。


諾成的消費貸借契約は実務上認めらていましたので、それほど画期的な改正ではありません。安易・軽率なお金の貸し借りが起こることを防止するため、書面が要求されているのがポイントです。




民法|お金の貸し借り 金銭消費貸借契約|金田一行政書士事務所

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