民法|協議を行う旨の合意による時効完成の猶予

query_builder 2021/08/24
blog:民法
いらすとや 相談

上手く活用すれば、単なる「話し合い」が法的に意味を持った「時効完成猶予のための協議」になります。2020年の民法改正により新設されました。是非ご検討ください。 


目次
1.改正の背景
2.適用の条件
3.時効完成が猶予される期間
4.「催告」との併用
5.改正民法151条全文
6.まとめ



1.改正の背景


旧民法下においては、時効消滅にかかる権利について当事者間で話し合いを進めていても、時効は進行し続けました。


そのため、話し合いに時間を要して時効消滅寸前になってしまった場合、次は民事訴訟などの時間と手間のかかる手段に移行せざるを得ませんでした。


時効の進行を止める簡易な手段としては「催告」がありますが、「催告」を使ってしまったら、次の手段がないからです。


「催告」など、時効の進行を止める手段については⇒blog:時効完成を阻止する


このような不都合を背景に民法が改正され、訴訟等への移行を控え、時間をかけて協議を行うことができるようになりました。最大で5年間も時効の完成が猶予されるので、時効消滅を避けるための有効な手段となります。



2.適用の条件


適用の条件は、①「権利についての協議を行う旨の合意」が②「書面」または「電磁的記録」によってなされること(民法151条)です。



合意書面は双方が記名(署名)・押印して作成してください。


この合意は電磁的記録(電子メール等)によることもできます。電磁的記録といっても様々なのでLINEなども該当するのか気になると思いますが...


一般論として、ファイルの添付・印刷・保存に適さないものは「電磁的記録」の対象外とされる傾向にあります。また、ブログやツイッターのように不特定多数に公開される伝達方法は、現状ではまず間違いなく対象外です。


法律も時代に合わせて変化してはいますが、確実な意思表示の伝達・保存という観点からは、新参のツールには市民権がまだ与えられていない状況です。市民権を獲得するためには、今後の事例の蓄積に期待したいところです。


なお、お使いのツールが「電磁的記録」に該当したとしても、メールやLINEでの「話し合いましょう」「わかりました」といった簡単なやりとりが本条の「合意」に該当するとは限りません。法律が明文で「書面」を要求するということは、「合意」に至ったことが客観的に明らかになったといえる確実な証拠を残しなさいということです。その意味で、書面を作成することをお勧めします。



3.時効完成が猶予される期間


  • 合意から1年間
  • 1年未満の期間を定めたときはその期間
  • 協議続行を拒絶する通知が書面でなされたときは、その通知から6か月
  • 再協議の合意を繰り返すことも認められる。ただし、効力が認められるのは、元々の消滅時効完成時から5年を経過するまでの間に限る。


最大で5年間、時効の完成が猶予されます。



4.催告との併用


これが少々使い勝手の悪いところですが、民法150条の「催告」と本条は、併用しづらくなっています。


「催告」(150条)が先行しているときは、「協議を行う旨の合意」に完成猶予の効力が認められる期間が限定されます。逆の場合も同じです。  


民法151条3項
催告によって時効の完成が猶予されている間にされた第一項の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。 同項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた催告についても、同様とする。
 


「時効の完成が猶予されている間」とは、元々の時効完成時を過ぎて猶予されている期間のことです。この段階に至ると、もはや協議による時効完成猶予は使えません。



5.改正民法151条全文


民法151条(協議を行う旨の合意による時効の完成猶予)
1 権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、次に掲げる時のいずれか早い時までの間は、時効は、完成しない。
① その合意があった時から一年を経過した時
② その合意において当事者が協議を行う期間(一年に満たないものに限る。)を定めたときは、その期間を経過した時
③ 当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、その通知の時から六箇月を経過した時
2 前項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた再度の同項の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有する。
ただし、その効力は、時効の完成が猶予されなかったとすれば時効が完成すべき時から通じて五年を超えることができない。
3 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた第一項の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。
同項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた催告についても、同様とする。
4 第一項の合意がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)によってされたときは、その合意は、書面によってされたものとみなして、前三項の規定を適用する。
5 前項の規定は、第一項第三号の通知について準用する。



7.まとめ


相手との関係を考慮すると「いきなり催告はやりすぎかな?」と思う場合、「まずは話し合いましょう」というソフトな手段が採れるようになりました。相手が乗ってきてくれるとは限りませんが、いけそうであれば、お近くの行政書士に合意書の作成を依頼してみてください。時効完成寸前の場合、最終手段として訴訟を検討する必要があります。弁護士さんに相談することをお勧めします。



民法|協議を行う旨の合意による時効の完成猶予|金田一行政書士事務所

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