民法|時効完成を阻止する方法(完成猶予と更新)

query_builder 2021/08/23
blog:民法
いらすとや アリス

2021.11.12  更新


I’m late, I’m late.. for a very important date.


消滅時効が完成がしそうなとき、これに適切に対処するための知識は重要です。


方法は大きく分けて2つあります。

一時的にストップ(完成猶予)するか、進行をリセット(更新)するかです。


目次
1.時効完成を一時的にストップする方法(時効の完成猶予)
 ①催告(民法150条)
 ②協議を行う旨の書面による合意(民法151条)
 ③仮差押え・仮処分(149条)
 ④天災等(161条)
2.時効の進行をリセットする方法(時効の更新)
 ①債務の承認(民法152条)
 ②裁判上の請求等(147条)
 ③強制執行等(148条)
3.まとめ


1.時効完成を一時的にストップする方法(完成猶予)


一時的に時効の完成をストップ(先延ばし)する方法を「時効の完成猶予」と言います。

民法上にで完成猶予事由として規定されているものは以下の通りです。


①催告(民法150条)

②協議を行う旨の書面による合意(151条)

③仮差押え・仮処分(149条)

④天災等(161条)


厳密には、後述の「裁判上の請求等(147条)」や「強制執行等(148条)」にも完成猶予の効果があります。これらは時効の完成猶予よりも「更新」を主眼とした手続きなので除外しています。


①催告による時効の完成猶予(民法150条)

「催告」とは、裁判外で債権者が債務者に対して履行(支払等)を請求することです。


催告は、口頭やメールで行うこともできますが、確実な証拠を残しておくという意味は、内容証明郵便をお勧めします。


blog:内容証明郵便|貸金返還請求権の文例


民法150条1項
催告があったときは、その時から6か月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。


「その時から6か月を経過するまで」「完成しない」と規定されています。


消滅時効完成より6か月以上前の場合、時効完成が危惧されるタイミングではありません。したがって、催告(請求)をしても時効完成猶予の効果は発生しません。


つまり、時効完成まで6カ月を切った状況で行うのが「催告による時効の完成猶予」です。

※催告をすることが妨げられるわけではありません。時効の完成猶予の効果が発生しないだけです。


なお、催告を連発しても、猶予期間を引き延ばすことはできません。完成猶予の効果が認められる催告は、最初の1回のみです(民法150条2項)。


民法150条2項
催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。



②協議を行う旨の書面による合意(151条)


2020年4月1日施行の改正民法により新設された規定です


従来ですと、上記の「①催告」が功を奏さなかった場合、次の手段としては、訴訟の提起など時間と手間のかかる方法を使うしかありませんでした。


しかし、この新設規定により選択肢が増えました。「権利についての協議を行う旨の合意」「書面で」なされたときには、原則として1年間、協議を再度行う合意がなされた場合には最大で5年間、時効の完成が猶予されます。


なかなか使い勝手のいい方法なので、別の記事で詳しく解説します。

blog:協議を行う旨の合意による時効完成の猶予


③仮差押え・仮処分(149条)

仮差押・仮処分を実行すると、手続終了後6か月間は時効の完成が猶予されます。旧民法では、時効の中断(改正民法における更新)の効果が認められていましたが、財産保全のための暫定的な手段にすぎないという理由で、完成猶予事由に改められました。


④天災等(161条)

「天災その他避けることのできない事変」が起きると、法的な手続きをとることが事実上できなくなります。そこで、天災等の影響が消滅してから3か月間は時効の完成が猶予されます。



2.時効の進行をリセットする方法(更新)


時効の進行をリセットする方法を「時効の更新」と言います。民法上で規定されている時効の更新事由は以下の通りです。


①債務の承認(民法152条)

②裁判上の請求等(147条)

③強制執行等(148条)



①債務の承認(152条)

相手方が権利の存在や不存在を承認すると、その時から新たに時効の進行が開始します。「承認」の方法に決まりはなく、口頭でなされた承認にも時効更新の効果があります。


時効の進行を止める手段としては最も簡単な手段です。ただし、相手が権利の存在や内容を争っている場合には期待薄な手段でもありあます。


[債務の承認の具体例]

・債務の一部を弁済

・利息の一部の支払い

・相手が弁済の猶予を懇願

・契約書・確認書等への署名押印


意外と簡単な事で「債務の承認」が認められ、時効がリセットされます。特に「弁済の猶予を懇願」はありがちです。


注意点としては、なんとなく認めている。暗黙の了解として会話が進んでいる。

それだけでは不十分な場合があることです。


「あの件の○○万円ね。わかりました。今月中に払います。」

具体的に言わせる。または具体的に請求することを心掛けてください。



客観性の欠如〗
実は、この「債務の承認」に関し、私的な法律トラブルで大失敗をやらかした過去があります。
“この会話内容なら「債務の承認」に該当するだろう”と高を括っていたら、法律的な要件を充たしておらず、その甘さを弁護士さんに指摘されました。

結果的にはなんとかなりましたが・・・医者の不養生? 紺屋の白袴? 
いえ、まずなにより勉強不足。そして、客観的な分析が足りませんでした。

自分の事となると、都合の良い解釈をしがちです。有名な某弁護士さんも「自分の裁判は自分ではやらない。必ず他の人に頼む。事件を客観的に見られないから。」と仰っていました。

客観性、これ重要です。



②裁判上の請求等(147条)③強制執行等(148条)

訴訟の提起や強制執行といった強力な手続きを実行すると、その手続き中は時効の完成が猶予され、手続き終了後には時効が更新されます。敗訴の可能性はありますが、少なくとも時効で権利が消滅する心配はなくなります。弁護士さんに依頼することになると思いますので、お任せすれば安心です。



3.まとめ


以上、時効完成が迫ってきたときの手段について解説致しました。

催告」または「協議」の結果、相手が「承認」してくれれば、最も手間がかかりません。最初の目標にしてみてください。




民法|時効完成を阻止する方法

茨城県稲敷郡阿見町の金田一行政書士事務所


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