民法・刑法|詐欺と詐欺罪と和菓子

query_builder 2021/11/29
blog:民法
いらすとや まんじゅうこわい

和菓子ってなんだ?と思ったかもしれませんが、古典落語の『まんじゅうこわい』です。

詐欺と関係があるので最後にちょっと触れます。(平成の某ヒットソング風のタイトルにしたかった、それが動機ではありますが。)

 

では、民法の詐欺取消と刑法の詐欺罪について

 

目次

1.目的の違い

2.詐欺行為(欺罔行為)の違い

3.欺罔行為の違法性・反社会性の違い

4.なぜ立証が難しいか

5.『まんじゅうこわい』と詐欺


1.目的の違い

 

民法の詐欺は96条、刑法の詐欺は246条に規定されています。

 

・「詐欺又は強迫による意思表示取消すことができる」(民法96条1項)

・「人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する」(刑法246条1項)

 

民法96条1項に詐欺と強迫がまとめて規定されている理由は、「意思決定に対する不当な干渉」という点が共通するからです。「強迫」と書くのが民法、「脅迫」と書くのは刑法(脅迫罪:222条)です。

 

両者を比べてみると、民法の詐欺は意思表示の取消しが目的であり、刑法の詐欺罪は他人に財産的損害を与えた者を処罰することが目的であるとわかります。

 

法の目的が違うので、同じ詐欺でも差異が出てきます。

 


2.詐欺行為(欺罔行為)の違い

 

何をもって「詐欺」と呼ぶのか、民法と刑法で定義が少々異なります。

 

民法における詐欺行為は、欺罔行為(ぎもうこうい)により他人を錯誤に陥れ、それによって法的な意思表示をさせる行為を指します。欺罔行為→錯誤→意思表示に因果関係が必要となり、意思表示と無関係の嘘は詐欺になりません。

 

刑法における詐欺行為は、財物・財産上の利益を処分させる錯誤に他人を陥らせる欺罔行為を指します。財産等の処分行為に対してなされる必要があるので、「あっ」と大声をあげて相手の注意をそらし、その隙に財物を奪うのは詐欺ではありません。相手の注意をそらすことが欺罔行為の目的だからです。ただの窃盗になります。

 

何が目的で他人を騙すのか。欺罔行為のターゲットに関し、民法は“意思表示をさせること”、刑法は“財物・財産上の処分行為をさせること”です。先述の「目的の違い」とリンクしています。

 

 

3.欺罔行為の違法性・反社会性の違い

 

上記に該当する欺罔行為。その全てが民法・刑法の詐欺行為に該当するわけではありません。民法・刑法、それぞれの目的に沿って限定されます。

 

契約・取引に大袈裟な宣伝・勧誘はつきものです。したがって、民法上の詐欺取消の成立には、取引上要求される信義に反する欺罔行為が必要です。“必ず値上がりする”と言われて土地を買ったような場合、それが根も葉もない全くの嘘なのか、それなりに可能性はあったのか、実質的な判断が必要になります。(消費者契約法の不実告知等の問題はまた別です)

 

刑法の詐欺罪に違法性が必要なのは言うまでもありませんが、この点が厳格に判断されます。これは詐欺罪に限った話ではなく、刑法全般に言えることです。刑罰を科すには、処罰に値するだけの違法性が要求されます。

 

刑法の詐欺罪が成立する範囲は、民法の詐欺よりも限定されています。したがって、刑法の詐欺罪に該当する場合、民法の詐欺にもほぼ間違いなく該当すると言えます。反対に、民法の詐欺に該当するとしても、刑法の詐欺罪に該当するとは限りません。

 


4.なぜ立証が難しいか

 

「詐欺は立証が難しい」と聞いたことがあると思います。

原因として、①内心の事情はわからない、②詐欺師が巧妙だから、その2点を挙げてみます。

 

①内心の事情はわからない

犯罪を処罰するには、その者に「故意」、すなわち犯罪事実の認識が必要です(過失犯を除く)。民法で「故意」が要求されることは稀ですが、詐欺取消に関しては「詐欺の故意」が必要になります。

 

「詐欺の故意」を大雑把に言うと“初めから騙す気だった”ということです。これは民法も刑法も同じです。

 

“初めから騙す気だった”かどうかは、その詐欺師?の内心の事情なので、外部からの証明は難しくなります。

 

②詐欺師が巧妙だから

詐欺の立証が難しいことは、詐欺師も当然知っています。証拠を残さず、言い訳を用意しておき、勘付かれたら早々に逃げる。立証しようにも、そのための材料がありません。

 

詐欺取消または詐欺罪の成立を主張する場合、相手が本物の詐欺師だと思うのであれば、迂闊に行動しないよう、ご注意ください。

 

詐欺取消の内容証明郵便

blog:内容証明郵便|詐欺か、錯誤か、それが問題だ。


5.『まんじゅうこわい』と詐欺

 

滑稽話に法律をあてはめるのも無粋ですが、無粋なことをしてみます。

 

〖あらすじ〗

暇をもてあました街の者が数名集まり、それぞれ嫌いなもの、怖いものを言いあっていく。

「クモ」「ヘビ」「アリ」などと言い合う中にひとり、「いい若い者がくだらないものを怖がるとは情けない。世の中に怖いものなどあるものか」とうそぶく男がいる。

他の男が「本当に怖いものはないのか」と聞くと、うそぶいていた男はしぶしぶ「本当はある」と白状する。「では、何が嫌いなのか」と念を押され、男は小声で「まんじゅう」とつぶやく。

男はその後、「まんじゅうの話をしているだけで気分が悪くなった」と言い出し、隣の部屋で(あるいは、自分の長屋へ帰って)寝てしまう。  

残った男たちは「あいつは気に食わないから、まんじゅう攻めにして脅してやろう」と、金を出し合い、まんじゅうをたくさん買いこんで男の寝ている部屋へどんどん投げ込む。

目覚めた男は声を上げ、ひどく狼狽してみせながらも、「こんな怖いものは食べてしまって、なくしてしまおう」「うますぎて、怖い」などと言ってまんじゅうを全部食べてしまう。

一部始終をのぞいて見ていた男たちは、男にだまされていたことに気付く。怒った男たちが男をなじり、「お前が本当に怖いものは何だ!」と聞くと、  

「このへんで、濃いお茶が1杯怖い」。

引用:『まんじゅうこわい』「ウィキペディア (Wikipedia): フリー百科事典」

リンク⇒『まんじゅうこわい』wikipedia:2021年5月23日 07:11 (UTC)

 


まずは民法の詐欺取消を検討します。とはいえ、既に饅頭を食べてしまっているので「取消」ができても饅頭は返ってきません。不当利得(704条)として饅頭の代金を賠償してもらうことになります。

 

主人公の男は、他の男たちから饅頭をもらうために「まんじゅう」が怖いと嘘をついています。“まんじゅうを贈与するという意思表示”をさせるための欺罔行為と言えそうです。

 

しかし、他の男たちが主人公を“まんじゅう攻め”にした動機は「気に食わない」「脅してやろう」です。饅頭を贈与したわけではありません。欺罔行為と意思表示の間に因果関係が存在せず、詐欺取消は不成立といえそうです。

※別の考え方もできそうですが、割愛します。

 

次に刑法の詐欺罪ですが、民法の詐欺取消と同様の理由で欺罔行為性が否定されそうです。詐欺罪は不成立となります。

※こちらも別の考え方ができそうですが、割愛します。

 

「まんじゅう怖い」から「まんじゅう攻め」の流れが突飛なので、法律をあてはめづらい。『まんじゅう詐欺』を成立させるために理屈をこねるのが馬鹿馬鹿しくなりました。

よって、違法性なしとします。


滑稽話なんで、まぁそうですよね。

 

 


ちなみに私は、某デパートの和菓子売り場で働いていたことがあります。和菓子にはうるさいです。しかし、糖尿病予備軍に従軍しているので、任務が終わるまで(終わるのだろうか)甘い物は控えています。

 いらすとや 甘い物をがまん


部屋には健康器具がいくつも転がっています。お腹が出てきたのでYシャツがカッコよく着こなせません。私はどうしたらいいのでしょう。健康体でいさせて。

いらすとや ダイエット

 

 


民法・刑法|詐欺と詐欺罪と和菓子

茨城県稲敷郡阿見町の金田一行政書士事務所

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