民法|未成年でも取消せない法律行為
2024.3.5 加筆修正 ※法改正に伴い「成年擬制」に関する記述を削除しました。
契約時に未成年であれば、その法律行為は取消せるかもしれません。
しかし、取消せない場合もあります。
未成年の法律行為、それが取消せない場合について解説します。
民法の改正により、2022年4月1日から成年年齢が現行の20歳から18歳に引き下げになります。その点にはご注意ください。
| 目次 1.未成年でも単独で可能な法律行為 ①単に権利得、又は義務を免れる行為 ②目的を定めて処分を許した財産 ③目的を定めないで処分を許した財産 ④身分行為 ⑤取消権の行使 ⑥許可された営業 2.法定代理人の取消権 3.取消の効果 4.その他の取消ができない場合 ①追認をした場合 ②詐術を用いた場合 ③取消権の時効消滅 |
1.未成年でも単独で可能な法律行為
未成年が法律行為をするには、法定代理人の同意が必要です(民法5条1項)。同意がない場合、取消すことができます(同法5条2項、120条1項)。
ただし、以下に列挙するように未成年が単独でできる法律行為もあります。
当該法律行為は、そのまま確定します。この場合、取消ができません。
①「単に権利を得、又は義務を免れる法律行為」(民法5条1項但書)
未成年者が誰かに物をもらう、義務から解放される。そのような場合、未成年者に不利益はありません。そのため、未成年者であっても単独で有効な法律行為が可能です。
“権利を得”とは、何等かの負担を課されることなく、単に贈与を受けることです。
“義務から解放される”は少々分かりづらいですが、未成年側には負担しかない契約を解除するような場合です。
例えば、贈与契約は口頭でも可能なので(民法549条)、『これあげるよ』と気軽に言ってしまった場合でも、これは立派な贈与契約です。
ただし、口頭でした贈与契約は、贈与する前であれば一方的に解除できます(民法550条)。『ゴメン、やっぱあれなしで。』と伝えれば解除です。
なお、書面でした贈与契約は一方的な解除ができません(550条の反対解釈)。
補足:「権利を得、又は義務を免れる法律行為」に該当するようにみえて、同意が必要な法律行為 弁済を受ける 借金を返してもらうだけなので不利益はなさそうですが、元本を消滅させると、それに連動して諸々の経済的利益を失う可能性があります。原則通り、法定代理人の同意が必要です。 割賦購入契約(ローン) 後述するように、「お小遣い」は自由に使用することができます。そのため、お小遣いの範囲で月々返済するなら同意不要にみえますが、割賦金支払債務の負担は重く、慎重な判断が必要なため、未成年が単独で契約することはできません。 解除の意思表示を受ける 契約が解除されることで義務から解放されますが、同時に権利や利益を失う可能性があるため、法定代理人の同意が必要です。 |
②目的を定めて処分を許した財産(5条3項)
「その目的の範囲内」で使うことができます。『参考書を買いなさい』とお金を渡すような場合です。では、そのお金で漫画を買ってしまったら...まずは事情を説明し、返品を受け付けてもらいましょう。
③目的を定めないで処分を許した財産(5条3項)
毎月のお小遣いなどです。お小遣いは「目的を定めないで処分を許した財産」として、法定代理人の同意を得ず、自由に遣うことができます。
『なんでそんな物買ったの?』となることも多いと思いますが、お小遣いとして渡している以上、契約の取消しは難しくなります。
ただし、金額や使い途によっては、常識的な「お小遣い」の範疇を超えているかもしれません。そのような場合、親の監督責任だからと諦めず、堂々と取消し・返金を主張しても良いと思います。むしろ、未成年の取消権を行使すべき場面です。
未成年者の取消権とは別の話になりますが、相手が詐欺や強迫的手段を用いた。未成年者の側に勘違い(錯誤)があった。そのような場合も取消すことが可能です(96条1項、95条)。
また、特定商取引法や消費者契約法による保護を受けられる場合もあります。
「未成年であることを理由とした取消し」だけが打開策ではありません。
| ②,③のように“既に支払ってしまった”ケースの場合、所持している現金で支払ったなら、その背景に法定代理人の同意があると考えるのが自然です。したがって、取消は困難になることが多いと思います。未成年の取消権が主に活躍するのは、まだ契約をしただけで、支払いをしていない段階といえるかもしれません。 |
④身分行為
子の認知、氏の変更といった身分行為は、法定代理人の同意を要しません。また、15歳に達していれば遺言をすることができます(民法961条)。ちなみに、臓器提供に関する意思表示が15歳から有効とされるのは、この民法961条をベースにしているからです。
⑤取消権の行使
法律行為の取消しは、未成年者自ら行うこともできます(民法120条1項)。ただし、未成年であることを理由に当該取消しを取消すことはできません。取消しを伝えると、そのまま取消が確定します。
なお、あとから親が出てきて『その取消しを取消します。』も混乱が拡大するので不可です。
⑥許可された営業(6条1項)
未成年であっても、ビジネスをしているなら、そのビジネスに関して法定代理人の同意は不要です。
2.法定代理人の取消権
法定代理人は、未成年者の法律行為に関する代理権、同意権、追認権、取消権を有しています。
未成年者の法定代理人となるのは、原則として親権者です。親権者がいないとき、または親権者が管理権を有しないときは、未成年後見人が法定代理人となります(838条1項)。
※「管理権を有しないとき」とは、親権の濫用などにより家庭裁判所によって管理権喪失の審判を受けた場合などです(民法835条)。
共同親権の場合、未成年者が法律行為をするには父母双方の同意が必要です(民法818条3項)。ただし、父母のどちらか一方の同意でも、有効な同意となり得ます(共同名義の場合:民法825条)。
3.取消の効果
取消しをすると、初めから契約は無効だったことになります(民法121条)。したがって、契約前の状態に戻すため、双方の義務が消滅し、受け取ったものは返します。
つまり、代金支払の義務はなくなり、支払ったお金は返還を請求できます。
逆に、未成年者が何等かの利益を既に受けていた場合、「現に利益を受けている限度」で返還することになります(121条の2第3項)。
「現に利益を受けている限度」とは、受けた利益がそのまま、もしくは形を変えて残っていることを意味します。現存利益(現受利益)と呼ばれます。
食べ物を食べてしまったなら、現存利益はありません。受け取った物があるなら、それは返還します。
少々複雑になるのは、お金を受け取り、それを使ってしまった場合です。
典型的な例としては、生活費に充てたり借金を返済した場合には現存利益あり、ギャンブルで浪費したなら現存利益なしとされます。
未成年に生活費やギャンブルは関係ありませんが、商品を購入したなら現存利益「あり」、形に残らない“遊び”に使ってしまったのであれば現存利益「なし」となりそうです。状況次第なので一概には言えません。
仮に現存利益が無く、返還義務がないとしても、相手に損害を被らせていることは事実です。未成年者本人に民事上の不法行為(民法709条)が成立し得ます。なお、当該未成年者に責任弁識能力が無い場合、賠償責任はありません(同法712条)。ただし、その場合には親の監督責任(同法714条)が問われます。
4.その他の取消ができない場合
①追認をした場合(122条)
未成年が成人に達した後は、当該法律行為の有効性を承認することができます。これを追認と呼びます。法定代理人も追認権を有しています。
追認をすると、当該契約は確定的に有効になり、以後は取消すことができません。
『追認します』と意思表示した場合に限らず、追認を思わせる一定の行為をしただけでも追認となります。代金の支払い・請求などです(法定追認:民法125条)。相手と交渉する際は気を付けてください。
| 相手方の催告権(20条2項) 未成年者と取引等をした相手は、1か月以上の期間を設定したうえで、「追認するか否か」を法定代理人に対して問うことができます。この催告を無視すると追認したことになってしまうので、無視しないでください。なお、未成年者のみに向けられ、法定代理人に伝わっていない催告は法的に意味がありません(民法98条の2)。 |
②未成年者が詐術(さじゅつ)を用いた場合(21条)
詐術とは、未成年者が自分は成年だと偽ること、親の同意があったと偽ることです。
未成年者の取消権は、未成年を保護するためのルールです。未成年者自身が不道徳な手段を使うのであれば、この保護は受けられません。
ただし、何が「詐術」にあたるかは難しいところです。
『そちらのお子さんが、こんな事を言っていた』
『これは詐術だ』
相手方がそんな主張してきた場合、法律の専門家に相談することをお勧めします。
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④取消権の時効消滅(民法126条)
法定代理人の取消権は、「追認をすることができる時から」5年で消滅します。
具体的には、未成年者が当該法律行為をしたことを法定代理人が知ってから5年です。知らない場合でも20年間で消滅します。
未成年者自身の取消権は、成年に達してから5年で消滅します。ただし、法定代理人の取消権が消滅した場合、それと同時に未成年者の取消権も消滅します。
以上、「未成年でも取消せない法律行為」について解説いたしました。
多くの場合、法律にこだわらず家庭内や当事者間で柔軟に解決していると思います。
しかし、あまりにも度が過ぎたケースもあります。そんな時は法律に沿った解決もご検討ください。
民法|未成年でも取消せない法律行為
茨城県稲敷郡阿見町の金田一行政書士事務所
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