民法|もう飲み屋のツケは踏み倒せません。
『飲み屋のツケは1年で時効』というのは有名な話でしたが、2020年4月1日施行の改正民法により、この話はなくなりました。現在は「飲み屋のツケも5年で時効」です。
5年に伸びたので、時効で踏み倒し作戦は望み薄です。
目次 1.改正前の「ツケ」の消滅時効 2.現在の消滅時効期間 3.いつから消滅時効が進行するか(時効の起算点) ①確定期限を定めた場合 ②期限を定めなかった場合 ③不確定期限の場合 4.蛇足 |
1.改正前の「ツケ」の消滅時効
改正前民法第174条4号(1年の短期消滅時効) 次に掲げる債権は、1年間行使しないときは、消滅する。 4.旅館、料理店、飲食店、貸席又は娯楽場の宿泊料、飲食料、席料、入場料、消費物の代価又は立替金に係る債権 |
※改正後は削除されています。
旧民法では、飲食・宿泊関係が1年、小売等は2年、医者や助産師関連は3年といったように職業ごとにバラバラの消滅時効期間が定められていました。これでは統一感がないので、これらの規定は全て削除されています。
2.現在の消滅時効期間
現在は、債権者が権利行使ができることを知ったときから5年(166条1項1号)、権利を行使することができる時から10年(同2号)というかたちに統一されました。
3.いつから消滅時効が進行するか(時効の起算点)
飲み屋のツケは、法律的には支払猶予、若しくは準消費貸借として構成できます。
とりあえず準消費貸借(588条)が成立したものとして話を進めます。
では、消滅時効が進行するのはいつでしょうか。
お店とお客の駆け引き?にかかわってきます。
①確定期限を定めた場合
支払の期限を「明日」「今月中」などと定めたのであれば、その期限を経過した時に債権者(バーのマスターなど)は「権利行使ができることを知った」といえるので、その時点から5年の消滅時効期間が進行します。
②期限を定めなかった場合
期限の定めなかった場合、「相当の期間」の経過後に支払を催告することができます(591条)。消滅時効は相当の期間の経過後に進行します。
「相当の期間」については、金額及び来店頻度等を考慮し、常識的な期間を考えることになります。2~3週間ほど待てば十分だと思います。
③不確定期限の場合
「次に来た時に払ってください」といった曖昧な約束をした場合、これを『不確定期限の定め』と解釈すれば、『次に来た時』までに支払えばよく、その時点から消滅時効が進行すると考えることもできそうです。
しかし、待てど暮らせど来店がない場合、時効が一切進行しないとすれば、これは不合理です。
不確定期限とは「いつか分からないけど、必ず到来する期限」を意味します。常連のお客さんであっても、次回の来店が「必ず到来する期限」とは言い切れません。
結局のところ、「②期限を定めなかった場合」とほぼ同じだと考えられます。相当期間の経過後に時計の針が動き出します。
4.蛇足
ツケ払いのシステムは、お店とお客の信頼関係が根底にありますので(泥酔して払えないだけかもしれませんが)。時効の話は置いといて、きちんと支払って、馴染みの店で美味い酒を飲みましょう。
このコロナ禍で言うことじゃないですね…もう1年以上、外では飲んでないです。外では。
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茨城県稲敷郡阿見町の金田一行政書士事務所
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