内容証明郵便|受取拒否をされたら

query_builder 2021/07/25
blog:内容証明郵便
いらすとや 拒否

 内容証明郵便が届いても、これを受け取る義務はありません。そのため、受取りを拒否することも可能です。受け取っていないので内容は伝わっていません。


 『到達したことになるから問題ない』 『それでも受け取ったことになる』


 そんな情報が散見されますが、そこまで明確に断言できるものではありません。あくまでケースバイケースです。ネット上の無責任な情報を疑問に思う方、是非ご覧ください。


目次
1. 原則として「到達」することが必要です。
2. 配達員が来たら「了知しうる状態」か?
3.「正当な理由なく」到達を妨げた?

4. 最高裁判所の判断
5.「到達したことになる」と安易に考えるは危険です。


1.原則として「到達」することが必要です。


 民法は、意思表示が「到達」した時に、その法的効果が発生することを原則としています(民法97条1項:到達主義)。


 意思表示を郵便で行う場合、相手が受領すれば「到達」になります。


 まだ中身を見ていなくても「到達」したことになります。法律的には、相手の支配権内に入り内容を了知しうる状態になったと表現します(最判昭和36年4月20日)。




2.配達員が来たら「了知しうる状態」か?


 配達員に対して受取拒否をしたということは、玄関までは文書が来ています。


 これを根拠に「内容を了知しうる状態になった」とし、『受取拒否は到達として扱われる』と安易に断定した情報が散見されます。

 

 しかし、「内容を了知しうる状態」に関する判例の事案では、同居人が文書を‘’受領‘’しています。読もうと思えば読めるから「了知しうる状態」なのであって、文書が手元にない以上、「了知しうる状態」とは言い難くなります。


 つまり、受取拒否とは状況が異なるため、当該判例を根拠として「到達」とみなすのは無理があります。




3.「正当な理由なく」到達を妨げた?


 相手が正当な理由なく到達を妨げたときは「到達したとみな」されます(民法97条2項)。


 『受取拒否に正当な理由はない。したがって、97条2項を適用できる』とする情報もあります。


 しかし、すべての受取拒否に正当理由はないと考えるなら、これはいささか乱暴です。


 例えば、全く身に覚えがなく、詐欺の手口だと思って受け取りを拒否した場合、受け取ったものとして話が進んだらどうでしょう、明らかに不合理です。


 具体的な検証を抜きに正当理由の有無は判断できません。




4.最高裁判所の判断


 せっかく内容証明を送っても、受取拒否で全く効果が発生しないとすれば、「拒否した者勝ち」になってしまいます。


 そのような結果が妥当でない場合、実際には到達していなくても、「了知しうる状態」にあったので「到達した」とみなす方向で解釈論を展開する必要があります。


 この点について苦心した、有名な最高裁の判例をご紹介します。先に挙げた民法97条2項は、この判例の考え方を採り入れ新設された規定です。


 文書の内容について察しがついており、自分に有利な話ではないので受け取らなかった。

 そのようなケースについて、「到達した」と判断しています。


最判平成10年6月11日民集52巻4号1034頁


遺留分減殺の意思表示が記載された内容証明郵便が留置期間の経過により差出人に還付された場合において、受取人が、不在配達通知書の記載その他の事情から、その内容が遺留分減殺の意思表示又は少なくともこれを含む遺産分割協議の申入れであることを十分に推知することができ、また、受取人に受領の意思があれば、郵便物の受取方法を指定することによって、さしたる労力、困難を伴うことなく右内容証明郵便を受領することができたなど判示の事情の下においては、右遺留分減殺の意思表示は、社会通念上、受取人の了知可能な状態に置かれ、遅くとも留置期間が満了した時点で受取人に到達したものと認められる


 もともとは不在のために配達ができなかったケースです。


 しかし、多忙を理由に受取り手続きをしておらず、受取拒否と似た状態になっています。


 この判例は、不在と受取拒否の双方で参考にされている判例です。どちらも「到達したとみなせるか」が問題となるからです。


 裁判所が重視した要素は、①いくら多忙でも郵便物の受け取りぐらいはできたこと、②中身を読むまでもなく内容は分かっていたこと、その2点です。


 これ以降の裁判例では同様の判断基準が用いられています。



5.「到達したことになる」と安易に考えるのは危険です。


 上記の判例は、「①受け取ることは簡単」だったこと及び「②文書の内容を推測できた」ことを重視し、当該事案に即した結論を出したにすぎません。状況が違えば異なる判断になる可能性があります。


[到達と判断されることが多い理由]
内容証明が送られてくる場合、事前に何等かのやりとりをしていれば「②文書の内容を推測」できる事が多いです。また、郵便物を「①受け取ることは簡単」です。不在票を見て郵便局に連絡することも簡単です。つまり、寝耳に水で内容証明が送られてきた、不在票の存在には気付かなかった、そんなケースでない限り、上記の2要素が充たしやすいということです(“充たしやすい”だけです)。


『到達したことになるはず』と高をくくり、何もしないのは危険です。


 時効の完成猶予のための催告など、時機を逃せば意味が無くなる性質の内容証明は、特に注意してください

 時効の完成猶予については⇒blog:時効の完成を阻止する(完成猶予と更新)


 他の方法で意思を伝えておくなど、次善の策を考えておく必要があります。


 上記の判例では、依頼を受けた弁護士さんが普通郵便を併用しており、それが功を奏しています。特定記録郵便などを併用し、“到達と判断されない可能性”に備えてください。




以上、内容証明郵便を受取拒否された場合について解説いたしました。  最後に3行でまとめます。


    「了知しうる状態」の判例知識だけで「到達」と断定するのは見当違いです。


  状況も聴かずに「受け取ったことになる」と断言するには千里眼が必要です。


  勉強不足の自称有識者に惑わされないよう、御注意ください。




内容証明郵便|受取拒否をされたら

茨城県稲敷郡阿見町の金田一行政書士事務所


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