建設業許可|「その他の工事」ブラックボックス化はダメ。ゼッタイ。
2022.9.10 更新
「その他の工事」は、許可業種の施工金額と比べ、重要性が低いと思われがちです。
そのため、“許可業種の施工金額以外のもの”が乱雑に投入され、ブラックボックス化する傾向があります。
とはいえ、強引に空き箱にするのは良くありません。
いい加減な処理をすると、パンドラの箱にもなります。
目次 1.まずは整理しましょう。 2.建設工事に該当しないもの 3.兼業売上高も難しい。 4.こんな場合は指摘されます。 ①金額が大きすぎる ②許可業種が多いのに・・・ 5.すべてを“許可業種の施工金額”に投入。その危険性。 6.「差替え」について、土木事務所に訊いてみた。 |
1.まずは整理しましょう。
「直前3年の各事業年度における工事施工金額」(様式第3号)をはじめ、決算変更届に記載される完工高(売上高)は以下のように分類できます。
①許可業種の施工金額
②許可を取得していない業種の施工金額
③建設工事に該当しない売上高
④兼業売上高
「その他の工事」に計上するのは、『②許可を取得していない業種の施工金額』です。
『③建設工事に該当しない売上高』は『④兼業売上高』に含まれます。
“建設工事に該当しない売上高”は見極めが重要なので、分けて考えます。
②の中に、③や④を混ぜてしまうのが「その他の工事」の“ブラックボックス化”です。
②を計上しないのが“空き箱化”、指摘を受けたら大変なことになるのが“パンドラの箱化”です。(この呼び方は私が勝手に名付けました。気にしないでください。)
新規の許可申請の場合
新規の場合、「許可業種の施工金額」は当然ありません。しかし、“新規許可を受けたい業種”の施工金額を明らかにする必要があります。「その他の工事」ではなく、「許可業種の施工金額」として記載します。 |
2.建設工事に該当しないもの
手引きに掲載されているものを列挙します(茨城県 令和4年7月1日以降版)。
[保守点検系]
保守点検、維持管理、保守点検・管理業務等の委託業務
[造園系]
除草、草刈り、伐採、樹木の剪定、庭木の管理、造林、施肥等の造園管理業務
[販売・リース系]
宅地建物取引、建売住宅の販売、リース、資材の販売、機械器具製造、修理、機械の賃貸、物品販売、解体工事で生じた金属等の売却収入
[清掃系]
浄化槽清掃、ボイラー洗浄、側溝清掃、その他の清掃
[その他]
・除雪、融雪剤散布
・測量
・地質調査、調査目的のボーリング
・墨出し
・採石
・造船
・コンサルタント
・設計
・機械・資材の運搬
・人工出し
・JVの構成員である場合のそのJVからの下請工事
・自社建物の建設
上記に該当するものは「兼業売上高」になります。名称が「○○工事」であっても建設工事には該当しません。これには騙されました。『「○○工事」と書かれているのにですか?』”と土木事務所で食い下がったことがあります(恥ずかしい)。
完工高に含めて良い場合
『建設工事の完成を目的とした契約に含まれる場合』には、完成工事高に含めることができます。このルールに則り完工高に含めているケースも多いです。ただし、経審で否定される可能性はあります。
3.兼業売上高も難しい。
建設工事業の他に事業を営んでいる、物品を販売している。
そのような場合、当該売上高は「兼業売上高」になります。
芝を販売している造園業者さん、電気資材を販売している電気工事業者さん等々。
工事と物品販売が密接にかかわる場合、線引きが難しくなります。
こちらも先述の「建設工事に該当しないもの」と同様に、経審または管轄の土木事務所の判断次第です。
4.こんな場合は指摘されます。
①金額が大きすぎる
「その他の工事」に計上される売上高は、許可を取得していない業種の施工金額です。
したがって、1件で500万円(税込)を超える工事が計上されることはあり得ません。
あるとしたら、それは建設業法違反です。※建築一式は1500万円(税込)以上
『その他の工事の金額 ÷ 500万円』で計算してみてください。
その他の工事の件数がこれを下回るなら、建設業法違反です。
例えば、 その他の工事の金額 7000万円 その他の工事の件数 8件 7000÷500=14(件)なので、 その他の工事は少なくとも15件以上あるはず。 ※建築一式のケースは除外します。 しかし、その他の工事は8件しかない ということは、7000 ÷ 8 =875(万円) 1件あたりの平均が875万円です。 計算上、500万円超えの工事を請負っているのは確実。これは建設業法違反です。 |
実際のところ、500万円に近い金額の工事をいくつも請負っているとは思えません。「その他の工事」に計上された売上は、数万~数十万の工事の積み重ねであると考えるのが自然です。その件数は、『その他の工事の金額 ÷ 500万円』で算出した件数を大きく上回るはず。金額があまりも大きい場合、“数百件の工事を請負っていないと辻褄があわない”なんてことにも。
もちろん、適切な処理の結果なら問題ありません。
②許可業種が多いのに・・・
許可業種が多いなら、ほとんどの完工高は許可業種のどこかに振り分けられるはず。
振り分けられなかった「その他の工事」の金額が多額だと、“取得する許可業種、間違ってません?”と余計な心配をされ、“その他の工事の中身はいったいなんなんですか?”と質問されてしまうはず。上述の「①金額が大きすぎる」にあてはまる可能性も高くなります。
こんな話を聞いたことがあります。全29業種のうち、建築系17業種の専任技術者になることができる「1級建築施工管理技士」という難関資格があり、これを社長さんが保有していました。“とれる許可は全部”の経営方針で、17業種の専任技術者になり、許可を取得している状況です。
ところが、計上されているのは「その他の工事」ばかり。内訳はすべて「管工事」です。
「勉強は得意だから、一番難しそうなのを受験したんだけど」
「やりたいのは管工事なんだよね」と言っていたそうな...
“あまりにも不自然。今すぐ1級管工事施工管理技士を受験した方が良いのでは...”
そう思わずには居られませんでした。
5.すべてを許可業種の施工金額に投入。その危険性。
なんかスッキリしますが、もちろんNGです。
しかも、多大なリスクが生じます。
業種追加の際、実務経験を根拠に専任技術者になる場合、根拠となる実績は「その他の工事」の中に含まれていることが多いです。
その他の工事の金額を『0』にしたまま何年も営業を続けると、根拠にしたい数字が存在せず、申請は諦めざるを得ない。そんなことが起こる可能性があります。
過去数年間に及び誤った処理をしていたことを認め、修正後に差替えればなんとかなる。
そうお考えになる方も居るかもしれません。
しかし、過去数年どころか、前年分の差替えでもリスクが付き纏います。
6.「差替え」について、土木事務所に訊いてみた。
決算変更届の提出時に、「もし過去の提出分も間違ってたら、全部差替えですか?」
と土木事務所で尋ねたことがあります。
これまで十数年依頼していたベテランの行政書士さんが引退ということで、私が引き継いだ案件です。前年度分に修正箇所があり、生意気にも修正させて頂いたのですが、差し替えのついでに尋ねました。割と気楽に。
すると、職員の方の表情が硬くなり、
「う~ん、経審を受けてたらマズイですね」と渋めのお答え。
過去の経営事項審査が全部覆るので、非常にマズい。
ハッキリとは言ってくれませんでしたが、そういう意味だと思います。当時の経審の点数を根拠に公共工事を受注しているわけですから、点数に影響が出る修正は非常にマズいです。
経審は受けていませんでした。しかし、想像すると寒気がします。
パンドラの箱が、開いてしまう...
ということで、「その他の工事」を甘くみないでください。
パンドラの箱には最後に希望が残されていたそうですが、
最後の希望を得るより、最初の絶望を回避してください。
建設業許可|「その他の工事」ブラックボックス化はダメ。ゼッタイ。
茨城県稲敷郡阿見町の金田一行政書士事務所
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