会社のパソコンを壊しちゃった時の法律知識

query_builder 2022/01/16
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いらすとや加工 パソコン 壊す

この世は諸行無常、形あるものはいつか滅します。

 どんなに注意していても壊れます。

 

『ヤバい、会社のパソコン壊しちゃった。』

 

いらすとや ふさぎこむ







全額弁償を覚悟しているかもしれませんが、それは一般的ではありません。

法律的な観点からのアドバイスを致します。

 

目次

1.根本的な考え方【報償責任・責任制限】

2.自分の落ち度を正確に把握しておきましょう。

3.会社から社員に対する損害賠償請求のルール

4.裁判例

5.まとめ

 

 

1.基本的な考え方【報償責任・責任制限】

 

会社は、労働者の労働によって利益を得ています。したがって、事業活動によって生じる損害も負担するのが道理です。損害の全てを社員に押し付けることはできません。【報償責任の法理】

 

また、業務の遂行は必然的に何らかのリスクを伴っています。社員の過失により会社に損害が発生した場合、業務遂行に内在していたリスクが顕在化したにすぎないとも言えます。

発生した損害、その全ての責任を社員に負わせるのではなく、社員が責任を負う範囲は制限的に考えるべきです。【責任制限の法理】

 

 

2.自分の落ち度を正確に把握しておきましょう。

 

例えば、「飲み物をこぼした」はありがちなので、まぁしょうがないです。落ち度もさほどありません。しかし、飲食が禁止されているオフィスで飲み物をこぼしたなら話が違います。ルールを守っていればパソコンが壊れることもなかったので、落ち度は大きいです。

 

次に、テレワーク・リモートワークの場合、自宅のリラックス空間での作業が想定されています。飲食をしながら、小さな子供が、ペットの猫が、などなど。元々破損のリスクが高くなっています。会社としても、そのようなリスクは重々承知しておくべきでしょう。

 

なお、議論をしていたらカッとなって液晶画面を叩き割った。パソコンを放り投げた。

これはもはや業務とは無関係です。全額弁償でも文句はいえないと思います。

 


“このぐらいの落ち度があったら、負担割合は○割”という法律的な決まりがあるわけではありませんが、ご自身の負担割合を考えるうえでの一定の目安にはなります。


ひとまず会社や上司の判断に委ね、何か言い分があるなら主張しましょう。

 


3.会社から社員に対する損害賠償請求のルール

 

►会社が社員に対して損害賠償を請求するのはOK

労働者は、労働契約に基づき労務を提供する義務を負います。その義務または付随する義務に違反して会社に損害を負わせた場合、債務不履行(民法415条)となり、損害賠償責任が発生します。また、労働契約とは関係ない行為で損害を発生させた場合には不法行為(民法709条)に基づく損害賠償責任が発生します。


►就業規則にその旨の記載が必要

民法を根拠に損害賠償請求ができるとしても、そのためには就業規則にその旨の記載が必要です。たとえば『故意または重大な過失によって会社に損害を与えたとき』には、会社から社員に対して損害賠償を求めることができる旨の規定です。

 

►給与からの控除(天引き)は原則不可

弁償金を給与から控除することは、原則としてできません(賃金全額払いの原則:労働基準法24条1項)。ただし、社員の側から“天引きにしてほしい”との申し出があれば、そのような処理も可能です。会社側から半ば強制した場合は違法となりますので、社員の側の自由意思に基づくことが明らかな場合のみ認められる方法です。


►賠償予約は不可

事前に損害賠償額を決めておく「賠償予約」は違法です(賠償予約の禁止:労働基準法16条)。罰金を定めたに等しく、労働者に対する不当な拘束・圧力になるからです。なお、事前に賠償額を決めることが禁止されているだけなので、損害の発生後に賠償請求が可能なのは既述の通りです。


►減給処分の限度額

弁償の代わりに減給で埋め合わせをする手段も考えられますが、労働基準法上の制限があります。


労働基準法91条が定める減給額の制限

①平均賃金1日分の半額を超えてはならない

②ひとつの賃金支払期間における賃金総額の10分の1を超えてはならない。


パソコンが10万円だったとして、10万円の減給処分が可能なのは、かなりの高給取りに対してだけです。1回のミスに対して複数回の減給処分をすることもできません。



4.裁判例


【大隈鐵工所居眠り事件 名古屋地裁昭和62.7.27】

夜勤の従業員が居眠り(7分間ぐらい)をしていたら機械(平削盤)を破損してしまった事件です。会社側は1110万円の賠償を求めましたが、実際の損害は333万6000円と認定され、その約25%である「83万4000円」を賠償することになりました。


『損害額の25%は昭和51年の最高裁判例でも述べられており、社員の責任割合を考える際の重要な基準になっています。


ただし、この裁判例は高額賠償のケースです。一個人に多額の損害賠償を負担させてよいのか、会社がきちんと教育していれば、保険に入っていれば、そのような価値判断が根底にあります。


そのため、数万円の備品にも25%基準が適用されるとは限りません。数万円の備品であれば、その50%ぐらいの弁償を求められても不合理とまでは言えないでしょう。

 

なお、上記の名古屋地裁判決では、以下のようなことも述べられています。


終身雇用という長期継続的な労使関係において、使用者は、懲戒処分のほかに、その都度損害賠償による責任を追及するまでの意思はなく、むしろ、こうした労働者の労働過程上の落度については長期的視点から成績の評価の対象とすることによって労働者の自覚を促し、それによって同種事案の再発を防止していこうと考えているのが通常のこととされ、現に会社でもそのような実態があった。


“いちいち賠償請求をしなくても、長期的な視点で成績評価の対象にすれば充分でしょ。”

ということです。

 


5.まとめ

 

ミスをしたことは反省すべきですが、全ての責任を背負う必要はありません。

法律的にも確立されたルールです。気を取り直し、仕事のミスは仕事で取り返しましょう。




私も、うっかりミスでパソコンを壊したことがあります。

自己所有のノートパソコンにコーヒーをこぼして壊しました。

キーボードの隙間からコーヒーが内部に染み込み、「アッ」と思ったら「ブツッ」と電源が切れました。

必死の救命措置も功を奏せず、そのままお陀仏です。最悪の気分でした。

 

いらすとや コーヒーこぼす

 







最後のSONY製「VAIO」だったのに…高かったのに…


自分の物を自分で壊しただけなので、100%自己負担です。

飲食しながらのパソコン作業はもうやめよう。そう誓いました。


しかし、懲りずに今日も、傍らにはコーヒーがあります。



会社のパソコンを壊しちゃった時の法律知識

茨城県稲敷郡阿見町の金田一行政書士事務所


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